【pflegerische Lied im Meer】
【刀満】
「んぅ〜、気持ちの良い朝だ。 夏でもないのに日差しが眩しいぜ」
昨日あんなことがあったというのに、お天道様は今日も元気いっぱいだ。
まあ、そこに太陽の意思なんてないがな。
あれは年がら年中熱く燃えてるんだ、ただ燃え続けるだけ365日休み無しにだ。
そう考えると、太陽ってのは難儀な仕事だなぁ。
……太陽は仕事じゃないか、じゃあ一体あれは何なんだ?
【刀満】
「太陽ってなんなんだ?」
【モニカ】
「何頭の悪いこと呟いてるんだお前は……?」
こいつ俺の素朴な疑問を、頭の悪いの一言で片付けやがった。
【刀満】
「おぉおぉ可愛い可愛い、似合ってるぞ」
【モニカ】
「むうぅ、またこんな服を着ることになるとはな」
普段見慣れたワイシャツやジャージ姿ではなく、赤と黒を貴重とした服になんかヒラヒラガいっぱいついてる。
ゴスロリだとか千夜が前に云ってたけど、生憎俺はそういうことに疎いのでよくわからない。
【刀満】
「しっかしなんだ、そういう服も似合うくせに普段がジャージって」
【モニカ】
「からかうな、こんな服国の連中に見られたら何を云われるか……」
【刀満】
「心配すんなって、どうせ心配したって誰にも見られやしないから」
【モニカ】
「それもそうなんだが……」
着慣れない服のせいか、わかってはいてもどこかに気恥ずかしいという気持ちがあるのかもしれない。
そういった面ではやっぱりこいつも女の子なんだなぁと思う。
何故モニカがこんな服を着ているのかというとだ……
……
【刀満】
「へぇ、結構まともな服もあるんだな、意外」
部屋の隅に殆どほったらかしにされていた紙袋をひっくり返し
中に詰まっていた服を盛大に広げてみた。
あいつが着てた服だからまともな服なてあんまりないと思っていたけど、皆結構まともだった。
【刀満】
「さてと、どれがあいつに似合うんだろうかね?」
とりあえず一着ずつ並べてみる。
勿論俺にはこういったセンスはない、さらに云えば着るのは俺じゃなくモニカだ。
あいつが気に入らなければ俺がここでこうやって決めたって意味はない。
だけど、一応俺の趣味というものを確かめておきたい……俺自身がだけどな。
【モニカ】
「ふぅ、ただいま。 って、何してるんだ刀満?」
【刀満】
「お帰り、モニカ的にはどれが着たい?」
【モニカ】
「は?」
【刀満】
「は? じゃなくてさ、モニカはどれを着たいよ?」
【モニカ】
「ちょ、ちょっと待て何の話だ? 第一私はそんな服もう着ないぞ」
【刀満】
「そいつは困るな、折角二人でどっか行くのにジャージや
いつものワイシャツじゃ新鮮味がない」
【モニカ】
「だから何の話だといっている、そもそも二人でどこかに行く話も聞いてないぞ」
【刀満】
「あら、忘れたのか? 何日か前に約束したろ。
もし俺がモニカを助けるようなことがあったら、翌日俺とどっか行くって」
【モニカ】
「……ぁ」
しばらく思案顔を見せたモニカだったけど、思い当たる節があったのか小さく声を洩らした。
【モニカ】
「そういえばそんな約束したな……」
【刀満】
「だろ、で、昨日わずかばかりとはいえモニカは俺に助けられた。
ここまでは理解出来てるか?」
【モニカ】
「認めたくはないが、刀満に助けられたのは事実だ……
くぅ、面倒な約束をしてしまったな……」
【刀満】
「というわけでだ、今日一日お前には付き合ってもらおうと思ってさ。
外出するのに良い服は無いかと、こうやって探してたってとこさ」
【モニカ】
「順を追って全部説明してくれてありがたいが……
せめていつもの服じゃダメなのか? あれでないともしもの時が」
【刀満】
「そりゃ無理だ、スカートとワイシャツ走りに行った間に全部洗濯したから」
【モニカ】
「なっ! なんだと!!」
細工は流々、後は仕上げをじっくり執り行えば良いだけだ。
【刀満】
「乾燥まで全部ひっくるめてやってるから、当分出てこないな」
【モニカ】
「くっ、き、貴様ぁあ」
【刀満】
「そんな怒るなよ、たまにはこういった服着て気分転換でもしろ。
風呂入って汗流して、30分後には家出るぞ」
【モニカ】
「あ、コラ待て!!」
……
と、いうことがあってこんな状況だ。
【刀満】
「こっちの世界でも特別変な格好じゃないから、もっと堂々としてろよ。 騎士だろ?」
【モニカ】
「騎士はこんな浮ついた服など着ない」
そりゃそうだろうなぁ。
【刀満】
「ま、どうあっても約束は約束だからな。
嫌だろうとなんだろうと付き合ってもらうぞ」
【モニカ】
「この服さえ変えてもらえれば、さして文句もないのだがな……」
はぁっと大きなため息、そんなに嫌か?
……
さて、モニカに普段とは違う服を着させて連れ出したは良いものの。
これからどうしたもんか……?
元より予定なんて全く決めていない、外に出れば何か思いつくだろうという
行き当たりばったりをするのが俺のスタイル。
【モニカ】
「で、私を連れ出してどこへ連れて行くつもりだ?」
【刀満】
「さてな……どっか行きたいところでもあるか?」
【モニカ】
「おいおい、刀満が連れ出したんだから、刀満がリードするのが普通だろう?
それとも何か、何も思いつかないとか云うんじゃないだろうな?」
その通り、とは口が裂けても云えない。
行ったらどうせ抜き手が飛んでくるのが分りきってるんだもの……
【刀満】
「行きたい所がないなら俺が好きなように動かさせてもらうけど?」
【モニカ】
「それでかまわんさ、今日一日は刀満に従うと決めたのだからな」
おやまあ、結構従順なんだな。
そういうことであれば、昨日千夜に教えてもらったとおりの進み方で良いのかな?
……
trrrrrrrrrr、trrrrrrrrrr……
【千夜】
「もしもし……何よ、これから寝ようと思ってたのに」
【刀満】
「そいつは邪魔したな、だけど少しだけ付き合ってくれ」
【千夜】
「何よ?」
【刀満】
「一般論で答えてくれ、デートってのは普通はどんなとこに行くもんなんだ?」
【千夜】
「デート? デートねぇ……」
うんうんと電話の向うで頭を捻っている千夜を想像してみた。
……別になんの違和感も無かった、千夜ってそういう子だしな。
【千夜】
「デート、デー……はぁ? でぇと!!」
もっと早くそういった反応が来るかと思ったが、思ったより遅かったな。
【刀満】
「でかい声出すなよ、耳が痛いだろ」
【千夜】
「だって刀満がデートって、誰と? いつどこでなんでまた?」
【刀満】
「俺の周りにいる異性なんて数えるほどしかいないだろ。
しかもここ最近いつも同じ奴が決まって俺の近くにいるしな」
【千夜】
「もしかして相手ってモニカ? なんだ、デートって云うから何事かと思えば……」
【刀満】
「俺がデートって云ってるんだからデートだ、付き合ってないけどな」
【千夜】
「それもうデートじゃないよ……だけどなんでそんなこと私に聞くかな。
私と一緒にぶらぶらどっか行ったことあるじゃない、あんなんで良いんじゃないの?」
【刀満】
「付き合い長いお前ならそれでも良いけどさ、モニカのことだろ。
気に入らないと一人でさっさと走ってどっか行きそうでさ」
【千夜】
「それは考えられるか、とりあえずモニカが見たことのないようなとこにでも連れてったら?」
【刀満】
「……映画館、とかか?」
【千夜】
「ありきたりだなあ、プラネタリウムとか硝子館とかが良いんじゃない?」
この街に硝子館なんてねえよ……
【千夜】
「あ、そうだ、海なんてどう?」
【刀満】
「海って、まだ入るには早いだろう」
【千夜】
「入らなくたって良いじゃない、海辺を歩きながらいつもとは違う会話でもすれば?
ま、モニカが海を見たことないってのが前提だけどね。
それでダメなら……いつも通りに接してなさい」
やっぱり最終的にはそうするしかないよな、アドバイスをもらえただけでも良しとしよう。
……
モニカと二人、電車で二つ先の街へと向かう。
電車は見るのも乗るのも初めてだろうけど、モニカの感想は一言。
【モニカ】
「そういうものなんだろう?」
だった、なんでも簡単に順応してくれてこっちとしては説明要らずで助かるよ。
【モニカ】
「休日に鍛練もせず、こんな格好で外に出るなど国にいたころでは考えられんな」
【刀満】
「折角の休みまで鍛練してたらいつ休むんだよ?」
【モニカ】
「さあな、私が騎士を辞めたときじゃないか?
騎士である以上、いつ何時何が起こるかわからんからな」
【刀満】
「大変だな、だけど普通騎士って男がなるもんじゃないのか?」
【モニカ】
「ああ、しかし女が騎士なってはいけないという決まりはない。
その辺りのことは聞くな、私には私の考えがあった、それで良いじゃないか」
無理やり話を断ち切り、頬杖をついて流れる景色へと視線を移していた。
こういう時にとる選択は二つ。
内容を変えて会話を継続するか、それともこのまま二人で無言を貫くか。
こいつの性格を考えたら後者の方が良いのだけど……
【モニカ】
「私のことよりも、お前はどうなんだ?」
【刀満】
「え?」
まさかモニカから話を振ってくるとは思わなかった。
【モニカ】
「私と出会ってしまってから、刀満の日常は日常ではなくなってしまった。
私を恨んでもらっても勿論構わんが、日常に帰りたいとは思ったりしないのか」
【刀満】
「こうやって日常に帰ってるじゃないか、俺にとっちゃ何もない時間は全部日常だよ。
恨む恨まないなんてどうでも良いことだしな」
【モニカ】
「ふん、お人好しが」
呆れも含めた微笑を見せ、対面に座っていたモニカが俺の隣へと席を移した。
【刀満】
「な、なんだよ急に」
【モニカ】
「いやなに、こういう時はこうするのが普通だと思ってな」
こういったことには疎そうなくせに、大胆というかなんと云うか……
……
街についてからは本当に行き当たりばったり。
千夜に勧められたプラネタリウムと硝子館が都合良くあったので両方行ってみた。
どちらも俺はそれほど好きではないのだが、モニカには両方とも新鮮に映ったようで良かった良かった。
【モニカ】
「貴重な体験をさせてもらったよ、私の国ではまずこんな経験をすることは出来ないからな」
【刀満】
「退屈しなかったか? 特に硝子館の方」
【モニカ】
「この世界の工芸品と見れば、どれも綺麗で心惹かれるものばかりだったではないか。
ああいったもの、私は好きだぞ」
【刀満】
「さいですか」
【モニカ】
「で、次はどこに連れて行ってくれるんだ?」
最初はあまり乗り気じゃなかったくせに、今は結構楽しんでくれているようだ。
でもさすがにこれ以上俺に引き出しはない、なのでいよいよ最終手段に出るしかない。
【刀満】
「モニカって、海見たことあるか?」
【モニカ】
「生憎無いな、私のいたところは内陸で沿岸に出るには数日かかってしまうからな。
遠征で行くことも無かったし、話で聞く限りの情報しか私にはないな」
よし、第一関門クリア。
ここで日常的に見てたなんて云われたら眼も当てられないところだった。
……
電車を降り、バスに揺られること30分。
ここから歩いて後30分というところだろうか、散歩にはちょうどいいくらいの時間だな。
バスを降りた瞬間から、モニカは環境の変化を感じ取ったようだ。
【モニカ】
「くん……香りが変わった」
【刀満】
「潮の香りだよ、海に近づくとこんな匂いが街に立ち込めるんだ。
ちょうど潮風も吹いてるから、尚更強く感じるんだろう」
【モニカ】
「なるほどな」
滅多なことでは海になど来ないのだが、何度か千夜と来たことはあるので
海までの道程は大体覚えている。
だけどそう考えると、俺の周りにいたのって毎回千夜なんだな。
勿論男友達もいるにはいるけど、千夜が近くにいるせいか学園以外での交流は殆ど無い。
たまには男友達とどっか出掛けてみるか?
……ダメだな、モニカとさらに姉さんまで今は家にいるんだ。
二人の世話をするのは俺だし、今しばらく男友達と遊ぶのは難しそうだな。
【モニカ】
「何一人でぶつくさ云ってるんだ、漏れてるぞ」
【刀満】
「え、声出てたの?」
【モニカ】
「少しだけだがな、心配しなくとも奴等を仕留めたら速やかに私は退散するさ」
ぅ、少し気まずいな……
【刀満】
「えぇとなんだ、悪い」
【モニカ】
「何故謝る? 刀満にとって至極当たり前のことだろ、私のことなど気にするな」
俺の隣を歩いていたモニカが一段高い防波堤へと登る。
頭の高さにちょうどスカートの裾がきている……これは無闇に頭を上げられないな。
【モニカ】
「刀満、あれが海なのか?」
【刀満】
「そうだよ、さっきから見えてただろ……って、防波堤が邪魔で見えなかったか」
【モニカ】
「小さくて悪かったな、普段のサイズなら……止めた、もう何度云っても理解しないみたいだしな」
【刀満】
「理解してないわけじゃないさ、ただ接してる時間が小さい方が長いから
自然とそう解釈するだけだ、俺と同じような身長にもなれることぐらいちゃんと覚えてるよ」
【モニカ】
「どうだかな」
こいつちっとも信用しやがらねえ、今のは本音だったのに。
そんな俺の本音などどうでも良いといった感じでさっさと防波堤の上を歩いていってしまう。
【刀満】
「やれやれ……」
足を速めてモニカに追いつき、しばらく二人無言のまま海へ続く道を歩く。
やがて防波堤が一時的に切れ、そこから下へと向かう階段に差し掛かった。
俺が一足先に階段を下り、続いてモニカも階段を下りて砂地へと足をつけた。
【モニカ】
「な、なんだ、足場が安定しないぞ」
【刀満】
「なんだ砂地も初めてか、そっちには砂漠もないのか?」
【モニカ】
「私の周りには無い、まさか沈んだりしないだろうな?」
【刀満】
「底無し砂なんて聞いたことねえよ、大丈夫だから付いて来い」
勿論砂浜初体験ではない俺はすたすたと、初体験のモニカはどこか恐る恐るといった感じ。
波打ち際まで足を進め、とりあえずモニカが追いつくのを待ってみる。
【モニカ】
「とっ……」
【刀満】
「初めて海を見た感想はどうだ?」
【モニカ】
「……凄いな、直線上に向こう岸が見えていない、これどこまで続いているんだ?」
【刀満】
「どうだろうな、人間の足で歩いて……数ヶ月くらいの距離あるんじゃないか?」
適当に答えてみた、だけどそれでもモニカは納得したようだ。
【モニカ】
「そんなに、これ全部水なのか……」
【刀満】
「水、といえば水なんだけどちょっと違うな、海の水舐めてみな」
【モニカ】
「あぁ……んぅ! な、なんだこれは、塩分を感じる」
【刀満】
「海水ってのはしょっぱいんだよ、塩は海から作るもんだからな」
【モニカ】
「なるほどな、これだけあれば一生分の塩には困らんか」
【刀満】
「綺麗な海じゃないと良い塩なんて出来ないけどな」
靴と靴下を脱ぎ捨て、素足で海へと入る。
ジーンズの裾が濡れてしまうけど、これくらい大したことじゃない。
【刀満】
「まだ泳ぐ時期には早いけど、結構気持ち良いじゃないか。
どうだ、モニカもこっち入ってきたら」
【モニカ】
「だ、大丈夫なのか?」
何が大丈夫なのかを聞いたのかはわからないが、まだ不安があるみたいだな。
初めて海を見たんだから当然といえば当然かもしれないけど。
靴とソックスを脱ぎ捨て、またも恐る恐る海へと足を踏み入れた。
【モニカ】
「濡れた砂と、水の感触がなんだかこそばゆいな」
【刀満】
「モニカの国にも湖ぐらいあっただろ?」
【モニカ】
「泉はあるが、泉と海は全くの別物だろう?
泉はこんな風に絶え間なく動きはしない、もっと穏やかで静かなものだ」
【刀満】
「それもそうだな、だけど大きな水溜りと考えりゃどっちも同じだろ。
折角入ったんだ、ちょっと歩いてみようぜ」
【モニカ】
「ま、待て刀満、そのなんだ……足が覚束ない」
【刀満】
「なんだよそれ、仕方ないな」
海慣れしてないモニカの手をとり、危なっかしいバランスを支えてやる。
これでちゃんと歩けるだろう。
……ちょっと待てよ、これ他の人が見たらどう見えているんだろう?
【刀満】
「……し、仕方ないか」
多分きっと間違いなく、俺たち付き合ってると思われるよな。
【刀満】
「どうだ、たまの外出も気分転換になって良いもんだろ?
いつも緊張してるのも悪いとは云わないけど、たまにはこういったことしないと大事な場面でしくじるぞ」
【モニカ】
「刀満、お前まさか今日のこれは……」
【刀満】
「好きなように解釈してくれ、俺としてはどうとってもらったって良い」
【モニカ】
「……フフ、おせっかいなやつめ。 だが、そんな気の使い方が刀満らしい」
俺に手を引かれて少し後ろを歩いていたモニカの手が離された。
どうしたのかと俺が振り返ると……
バシャ!!
【刀満】
「わぶ!」
やられた、水ぶっかけられた。
それほど大量にかけられたわけではないので、びしょ濡れとまではいかないが
口に入った海水がしょっぱくてまずい。
【刀満】
「ヤロウ……」
【モニカ】
「勝手に連れ出したお返しだ、それから小さい小さいと普段から思ってる罰だと思え」
【刀満】
「思ってるだけで罰くれてんじゃねえよ!」
バシャシャ!!
【モニカ】
「わっ! 止めろ、びしょ濡れになるじゃないか!」
バシャバシャ!!!
【刀満】
「お前こそ止めろっての!」
二人で水の掛け合いっこ、はたから見たら仲良くじゃれてるように見えるかも知れないけど
俺だったらバカップルだねぇんなんて思うんだろうな……
でもたまにはこんな莫迦なことするのも良いかもな。
【モニカ】
「そら……とっ! ぉ!」
打ち返す波にバランスを崩されたのか、モニカの重心が後にずれた。
【刀満】
「調子に乗るから! ……とと、やめひっぱ!!」
バッシャーン!!
伸ばした手を掴んだモニカが強く引っ張るもんだから、俺までつられて倒れこんでしまう。
【モニカ】
「……」
【刀満】
「ぁ」
しかも運の悪いことに、下になったのはモニカだ。
全身ビショビショのモニカを見下ろす俺、なんかとんでもない構図だ。
【モニカ】
「……」
【刀満】
「……」
【モニカ】
「おい、どいてくれ。 私が動けない」
【刀満】
「ぁ、わ、悪い!!」
慌ててモニカの上から身体を横に回転させ、俺もモニカと同じように背中から海へと落ちた。
【モニカ】
「はは、何をやってるんだお前は。 お前までビショビショじゃないか」
【刀満】
「だな」
【モニカ】
「……クス、ハハハ」
【刀満】
「笑うなや」
【モニカ】
「いやすまん、だがおかしくてな……アハハハハハ」
【刀満】
「お前でも、そうやって笑えるんだな」
【モニカ】
「そのようだな、私もこうやって笑ったのは久しぶりだよ」
【刀満】
「二人して何莫迦なことやってんだろうな」
【モニカ】
「だな」
その後、俺も珍しく声を出して笑った。
服を着たまま二人ともびしょ濡れで海で寝転がりながら笑いあう。
モニカの笑った顔は見れていないけど、こうやって普通に笑うことが出来る子なんだって
わかっただけでも、こんな莫迦なことになっても良いと思えた。
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